グラハム|House of Otium

グラハム

グラハム

2017年にノーベル文学賞を受賞したイギリスの日系作家カズオ・イシグロ。代表作は英国貴族に仕える執事の人生を描いた「日の名残り」。本の中にはポートワインを扱う場面が三ヶ所あります。デカンターに移し替える、葉巻と一緒に用意する、セラーからとびきり上等のものを出すように命じられる。そう、ポートワインは貴族が優雅に楽しむものなのです。昔々に流行った甘いだけの安価なポートワインは似て非なるもの。まず、ポートワインとはポルトガルの港町ポルト(英語読みでポート)周辺で造られるアルコールを強化したワイン。歴史は古く1675年にポルトと名付けられてオランダに輸出されています。1549年に宣教師フランシスコ・ザビエルが来日。山口の大名、大内義隆に献上したワインがポルトガル産でした。おそらく長い船旅に耐え得るのはアルコール分の高いポートでしょう。新し物好きの織田信長も愛飲したそうです。もし、当時に最上級品を得意とするグラハム社があれば・・・。グラハムは1820年にスコットランド出身のウィリアムとジョン兄弟がポルトに設立。現在は1970年にグラハム家と親交が深かったシミントン家が買い取り、経営しています。長い伝統のある葡萄の踏み桶(ラガール)をコンピュータ制御に代えるなど革新的な面もあります。同社が造るのは白葡萄が原料のホワイト・ポート。赤葡萄のルビー・ポート。ルビー・ポートの最高峰であるヴィンテージ・ポートは作柄の良い年にしか出来ず10年に3回出来ればよい方。単一畑(シングル・キンタ)のヴィンテージ・ポート。熟成させ色が琥珀色になったトウニー・ポートは10年、20年、30年、40年ものがあります。ルビー色に輝く甘く芳醇な一口から優雅な時間が広がります。
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